輸液

●輸液療法とは,適切な輸液製剤を経静脈的に投与する治療である.●輸液療法のうち,生体内の水分量,電解質,酸塩基平衡の正常化を目的とするものを水・電解質輸液,エネルギー・栄養源の補給を目的とするものを栄養輸液という.●血管内に投与された輸液成分は,血管壁と細胞膜を介して,細胞内液・組織間液(間質)・血漿の各分画に分布する.
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●水は血管壁も細胞膜も通過でき,膠質浸透圧〔p.74〕や張度〔p.74〕により,その分布が決まる〔次項参照〕.●ナトリウムイオン(Na+)は血管壁を通過できるが,細胞膜を自由に通過できない.●アルブミンなどの分子量の大きな物質は血管壁を通過できず,血漿中に留まる.

●輸液製剤は血管内に投与されると,速やかに細胞外液全体に分布する.●さらに細胞外液の張度〔p.74〕が変化すると,細胞内液との張度差に従って水の移動が起こる.●輸液製剤はその張度から,等張液(生理食塩水や乳酸リンゲル液など)と自由水(5%ブドウ糖液など)に大別され,多くの輸液製剤はこの2つを組み合わせて作られている.

体液の分布●体液は細胞内液・細胞外液にそれぞれ体積2:1の割合で分布し,さらに細胞外液は組織間液・血漿にそれぞれ体積3:1の割合で分布する〔p.72〕.


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等張液の分布●等張液とは,体液と張度が等しい溶液をいう.●等張液を投与すると,全て細胞外液に分布し,組織間液と血漿に体積3:1の割合で分布する.


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自由水の分布●自由水とは,有効浸透圧物質〔p.74〕を全く含まない(張度=0)溶液をいう.●自由水を投与すると,細胞内液・組織間液・血漿の全ての分画に分布し,それぞれに体積8:3:1の割合で分布する.


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呼吸困難


呼吸困難とは,呼吸をする際に感じる努力感や不快感を総称した自覚症状である.

 

 

●患者は,様々な表現を用いて症状を訴える.


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呼吸困難の発生機序として,次の4つの仮説が考えられている。


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臨床的な呼吸困難の重症度を評価する方法として,修正MRC(mMRC)質問票やBorgボルグスケールがある.修正MRC(mMRC)質問票●日常生活に対する呼吸困難(息切れ)の程度を評価する.●健康状態を評価する他の指標との相関に優れている.


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Borgスケール●患者が自覚する呼吸困難の程度を10段階に分ける.●重症度や治療効果の判定などに用いられる.


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呼吸困難は,原因となる病変の存在部位により呼気性呼吸困難と吸気性呼吸困難に分類される.●次の表以外の疾患(肺炎,肺結核,肺癌,気胸心不全,貧血,神経筋疾患など)の場合は,上気道と下気道ともに侵されやすく,混合性となることが多い.●肺癌,心不全,貧血,神経筋疾患では,慢性的に呼吸困難を訴えることがある.


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無顆粒球症

顆粒球,特に好中球が著しく減少し,通常好中球数が500/μL以下となった状態のことである.赤血球・血小板数は正常である.原因として抗甲状腺薬,抗菌薬,消炎鎮痛薬などの薬剤性が最も多い.

 

❶発症:抗甲状腺薬などの薬剤を使用中〈薬剤が原因になりやすい〉

❷39〜40℃におよぶ高熱(重症感染症様),咽頭扁桃に白苔を伴う潰瘍,強い咽頭痛,全身衰弱感などがみられる.〈急性細菌感染症

❸末梢血で白血球↓↓,赤沈亢進,(※赤血球,血小板数は正常)骨髄でも骨髄球系↓↓(回復期↑↑)がみられる.➡無顆粒球症を考える.

治療 

早期発見,原因薬剤の即時中止が最重要!

⒈原因薬剤の中止

⒉抗菌薬

⒊G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)

⒋必要なら無菌室に収容

感染症を発症していなければ,感染予防が重要である.

●原因菌がわかるまではスペクトラムの広い抗菌薬を用いる.

●副腎皮質ステロイドによる治療は,敗血症性ショックや咽頭腫脹が著しい場合に限った方がよい.


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顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は,好中球の産生を特異的に促進する造血因子である.

●G-CSFには好中球に対する作用の他,末梢血への幹細胞の動員や,感染症の抑制などにも効果が認められている.

頭痛

頭痛には一次性頭痛と二次性頭痛があります。
一次性には緊張性頭痛、偏頭痛、群発頭痛があります。
二次性にはくも膜下出血髄膜炎など。

主訴 頭痛

まず始めに一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別を行う.●二次性頭痛の中でも特に命に関わるような危険な頭痛は病歴が特徴的であるため,問診が有用である.また適切な検査を行ってこれらを除外することが重要である.●二次性頭痛が除外され一次性頭痛が疑われたら,さらにより丁寧な問診を行って診断をつける(主に片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛の3つがある)

緊張性頭痛なら
①頭を締め付ける,頭重感がある(後頭部頭蓋周囲が多い).〈非拍動性で両側性〉
❷痛みの強さは軽度〜中等度で,日常動作によって増悪しない.
❸光・音過敏や,悪心・嘔吐を伴うことはほとんどない.
❹触診により,頭蓋周囲の圧痛増強を認めることがある.
❺各種検査にて,器質性疾患が除外される.➡緊張型頭痛と診断する.
治療 頭痛の誘因となる精神的・身体的ストレスの除去が最優先だが,重症の場合は薬物療法が必要である.⒈非薬物療法:ストレッチ,頭痛体操,認知行動療法など⒉薬物療法:鎮痛薬(NSAIDsなど),予防薬(抗うつ薬など)


片頭痛なら
❶好発:20〜40歳代の女性〈男女比1:4〉
❷視野にギザギザした光がちらついた(閃輝暗点)後,〈頭痛の前兆がある例:約30%〉またはこのような前兆がなくても,〈頭痛の前兆がない例:約70%〉
❸こめかみから側頭部にズキンズキンと脈打つような頭痛が生じ,〈拍動性〉この発作が1ヵ月に1〜5回程度繰り返される.
❹歩行,階段昇降,家事などの日常動作によって痛みが増悪する。
❺光過敏(羞明),音過敏,臭過敏,悪心・嘔吐を伴う。
発作時
①トリプタン製剤(心筋梗塞,脳血管障害,エルゴタミン製剤併用などは禁忌)
②鎮痛薬(NSAIDs,アセトアミノフェン
③エルゴタミン製剤
薬物療法:増悪因子を避け,暗く,静かな場所で安静にする。
非発作時(予防)
a.生活指導:ストレス,疲労,睡眠不足・過多,飲酒などの誘因を避ける.
b.予防薬:Ca拮抗薬,抗てんかん薬,抗うつ薬,β遮断薬など
群発頭痛なら

くも膜下出血
❶好発:40~60歳〈脳動脈瘤→男女比 1:2,40~60代に好発〉〈AVM→男に多い,20~40代に好発〉
❷“バットで殴られたような”突然の激しい頭痛,〈脳動脈瘤破裂〉(激しくないこともあるので注意.片麻痺などの局所症状はないことが多い)❸悪心・嘔吐,意識障害,けいれん,〈頭蓋内圧亢進症状〉❹項部硬直,Kernig徴候(+)など(出血直後には認められないこともある),〈髄膜刺激症状〉❺頭部CTで,鞍上部周囲にヒトデ型の高吸収域などがみられる.〈疑ったら直ちにCT!〉➡くも膜下出血(SAH)と診断する.